摘要: 2015 年に行われた国勢調査の結果から, 1920 年の調査開始以来初めて総人口が減少に転じたことが報告された (「平成 27 年国勢調査 (総務省統計局)」, http://www. stat. go. jp/data/kokusei/2015/index. html, 2018 年 9 月 11 日確認). 国立社会保障・人口問題研究所 (2017) によると 2065 年における日本の総人口 (出生, 死亡共に中位推計) は約 8800 万人と推計され, 今後 50 年間で総人口が 3 割以上減少する. また, 国土交通省の推計では 2050 年までに無人化する地域が約 19%, 人口が半減以上する地域が約 44% に達する (「国土のグランドデザイン 2050 (国土交通省)」, http://www. mlit. go. jp/common/001047113. pdf, 2018 年 9 月 11 日確認). 以上の社会変化は, 社会経済だけではなく生物多様性保全や生態系管理の在り方にも大きな影響を及ぼすと考えられる (例えば, 江成 2010; 大澤 2017; 角田 2017). 本稿では人口減少による自然環境や生物多様性にかかわる問題の一例として, 特に大型哺乳類を中心とした野生動物管理を扱う. 1990 年代以降, 日本では野生動物の分布拡大と共に人間との軋轢が増加し社会問題化している. また, 増加したニホンジカ (Cervus nippon, 以下シカと記す) が生態系や生物多様性に影響を与えている (梶・飯島 2017). 近年の野生動物を巡る問題の顕在化とその解決に対する社会的需要の高まりを受けて, 国および地方自治体は野生動物の管理を強化してきた. 2014 年に改正された 「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」 では 「管理」 を 「生息数もしくは生息地を適切な水準まで減少させること」 と定義し, 分布域拡大や個体数増加が顕著な 「第二種特定鳥獣」 を管理の対象とすることが明文化された. また法改正の前後には, 捕獲を強化して 2023 年度までにシカやイノシシ (Sus scrofa) 等の生息数を半減させる目標が掲げられた (「抜本的な鳥獣管理対策について (環境省)」, https://www. env. go …